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天 球 儀

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蒼天の系譜 【第二幕】 ...04

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【第二幕】 エルフと盗賊


04





 話がまとまると、ユウたちはロマリアで馬を手配すると早々にカザーブに向かって出発した。
 さすがに宿屋でいつまでも部屋を取っているのは金銭面でも効率的ではないので、ティアラはクリスとアンの家で見てもらうことになったが、移動は出来る限り早いがいいし、どうせ戻ってくるのだからということと、国王から必要なものがあれば言ってくれて構わないという言葉に甘え、ユウたちは馬を駆ることに決めた。

 カザーブはロマリア王都を北上した山間にある村だ。
 小さな村ではあるが、そこからさらに北上した先にあるノアニール地方、そして東部に位置するアッサラーム地方への中継ポイントでもある。
 街道もしっかり整備されているので順調に、と行きたいところではあったが、どこも魔物がはびこるご時世にそう簡単にことが運ぶものでもなかった。
 途中、馬を休ませる為に休憩を取ってた小さな泉でユウが顔を洗っていると、頭上から奇妙な羽音が聞こえ、怪訝に思って濡れた顔を上げて思わず首をかしげた。視線の先では蜂のような生き物が飛び交っている姿が見えたが、距離がそれなりにあるにしては蜂というには大きすぎる。シルエットも若干違うようだ。それはさながら。


「……緑のサソリ?」


 自分で言っておいてなんだが、緑のサソリなんて本でも見たことがないし、そもそもサソリは飛ばないだろう。 じゃあいいところ蜂か、とも思ったがやっぱりどう考えても蜂の大きさではない。


「いや、魔物だろ!」


 自分の考えに自分で突っ込んで、慌てて手元に置いてあった剣に手を伸ばした。それと同時に緑のサソリは急降下し、そのおぞましい尻尾を振り下ろした。
 寸でのところで抜いた剣で振り下ろされた尻尾を叩き切り、切られた断面から緑の体液を飛び散らせながら魔物が奇声を上げる。
 その奇声にセリアとレンが駆けつけてきたが、緑のサソリのような魔物の仲間もまた呼び寄せてしまったようで、森の影から数体姿を現し、こちらに向かって襲い掛かってきた。


「なに!? 緑のサソリ!?」

「いや、サソリは飛ばないだろ」

「冷静に突っ込んでる場合か! ありゃキラービーだ!」


 自分と同じ感想を持ったセリアに思わずユウが突っ込むと、すかさずレンも脇からユウを突っ込む。まさにトリオ漫才状態だ。そしてわかってはいるが、そんなことをやっている場合ではない。
 ビーというくらいならやっぱり蜂か? 場合ではないということは分かってはいるが、目の前の魔物に対する疑問が何故か尾を引っ張り、ユウは思わず首をひねってしまい、彼の考えてることが分かったのか、レンが渋い顔をしてユウを見てきた。
 その微妙に冷たい視線にいたたまれなくなり、ユウがひねった首をそのまますくめる。呆れた顔で嘆息しかけたレンは、そこで魔物の群れに切りかかっていったセリアに気が付きとっさに声を上げた。


「セリア!! 気をつけろ、そいつらは……」


 言いかけたところでセリアが切りつけた一体が断末魔を上げながら地面に落ちたが、すぐに後ろから他の一体が襲い掛かってくる。彼女は突き出された尻尾をかわしたつもりだったが、その先端が剣を持つ腕を掠めて小さく赤い筋が走った。
 しかしかすり傷程度で彼女がひるむはずもなく、セリアはそのまま剣を返してキラービーを切りつけようとしたが、不意に腕に違和感を感じて一瞬その動きを止めた。


「……えっ?」


 傷の付いた腕がしびれて上がらない。徐々に指先にも力が入らなくなり、持っていた剣の感覚さえなくなって手にしていた剣がするりと抜け、乾いた金属音を響かせて地面に落ちた。


「おい、セリア!! ボケっとすんな!!」


 呆然と痺れて力の入らなくなった手を眺める彼女の周りには未だに複数のキラービーが飛び交っており、今にも襲い掛からんばかりの勢いだ。
 それを見たレンが小さく舌打ちして自分に向かってきたキラービーを叩き落し、セリアに向かって駆け出す。その場にとどまったユウは、以前ティアラに教えてもらった魔法の印をとっさに結んでその手に意識を集中させた。


「頼むから、ちゃんと発動してくれよ……光よ我に集え、矢となりて悪しきものを撃て……っギラ!!」


 詠唱と共に徐々に印を結んだ中央部に熱が集まり、淡い光が生まれる。いけると踏んだ瞬間に魔法を唱えると、淡い光がまぶしく輝き閃光がほとばしり、そのまままっすぐキラービーの群れに命中して 何体かは地面に落ちた。しかし効かなかったのか避けられたのか、一部のキラービーは威嚇するように激しく羽を鳴らして飛び交っていた。


「よくやった、ユウ!!」


 だが怯ませるには効果は十分だったようで、その隙にレンが次々と残ったキラービーを叩き落していき、そこでようやく全てのキラービーを片付けることが出来た。
 なんとか呪文が成功したユウは思わずホッとして大きく息をつき、腕を負傷したセリアに駆け寄って大丈夫かと声をかけると、セリアは油断したわ、と申し訳なさそうに笑って肩をすくめた。


「キラービーは尻尾に麻痺させる毒を持っててな。今回はかすり傷だったから腕だけですんだが、最悪の場合は死に至る」


 皮袋から満月草を取り出したレンがそれを煎じてセリアの傷口に宛がい、その上からきつめに包帯を巻いて処置をする。ティアラがいれば毒を受けようが麻痺しようが、魔法でたちどころに消し去ってくれたのだろうが。
 魔物と交戦するにしてもそうだ。彼女の魔法は単発撃つものから広範囲の敵に有効なものまでと術の幅が広く、また威力も高い。弱い敵なら一撃で一掃できるし、魔法のきかない敵に対しては支援に回ってくれるので、ユウたちは安心して攻撃に専念することができる。そういう戦術面においても、彼女が一人いないだけでかなりの違いがある。


「まだ暫くは違和感が残ると思う。気をつけろよ」

「ごめん、そうね……今まではティアラの魔法があったから、ついその調子で突っ込んでた。そうでもないと思ってたけど、結構彼女に甘えてたのね。私たち」


 感慨深そうに息絶えたキラービーの死骸を見つめ、セリアが眉根を寄せた。
 確かに魔法は万能だ。怪我をしても瞬時に傷口はふさがるし、毒や麻痺にも対応できる。戦闘においては高火力で敵をなぎ払い、一瞬で殲滅させることも出来る。
 しかしいくら万能だからと言って、それにばかり頼っていてはそれに慣れ、本来気をつけるべきことに注意を欠き、下手をすれば最悪の事態を招きかねない。大きすぎる力はおごりを生み、ひいてはそれが身を滅ぼすことに繋がる。ティアラを欠いた今の自分達に、今回の件は図らずも十分な戒めになった。


「さて、セリアの腕がこれじゃあ先には進めないし、今夜はここで野宿だな……どうかしたか? ユウ」


 セリアの腕の処置を一通り終えたレンが大儀そうに立ち上がりながら振り返り、その場で自分の掌をじっと見つめたままのユウに気が付いて訝しそうに声をかけた。
 声をかけられたユウがハッとしたような顔をし、見つめていた掌を軽く握って、あのさ、と視線を上げた。


「魔法って普通詠唱があるよな」

「今おまえが使った通りだろ。威力の高い魔法ほど詠唱は長くなって、精神力の消耗も激しくなるってのが一般的だ」


 真剣なまなざしで当たり前のことを聞いてきたユウに、レンは呆れた顔をしたが、ユウは怒ることもなく眉間に皺を寄せて何か考え込む様なそぶりを見せる。
 彼の仕草にレンとセリアは顔を見合わせ、それがどうかしたのかと問いかけると、ユウは眉間に皺を寄せたまま言葉をつづけた。


「じゃあティアラはどうして、無詠唱で魔法が発動するんだ?」

「……あ!」


 不可解そうな表情のまま口にしたユウの言葉に、レンが目を見開いて声を上げた。
 彼女の出自の関係上、彼女が魔法を使うことは当たり前のようになっていた。ネクロゴンドの家系は代々、魔法を扱う能力に長けている。修業を積み、悟りを開いて初めてなれると言う賢者を、代によって力に差はあれど、家系という血でネクロゴンドは輩出していた。
 だからこそ彼女が魔法を使うことに何の違和感もなかったのだが、改めて指摘されてみると、確かに彼女は詠唱をせず魔法を発動している。
 魔法は本来、詠唱することによってエネルギーを集めて発動させる。文言に魔力を乗せ、マナに語り掛けることによってマナを集め、集まったマナのエネルギーを魔法として放つのだ。しかしティアラはそれを必要とせず、直接魔法を発動させている。


「ティアラの中に存在するっていう精霊が、もしかしたら関係あるのかもしれないな」


 マナは自然界に存在するものすべての源だ。そしてマナが姿かたちをなせるほど集まって凝縮した存在が精霊になる。いわば魔法の元になる高エネルギー体の存在と言ってもいいだろう。その理屈から言えば、彼女は自分の中に存在する精霊のエネルギーを使用することによって、詠唱でマナを集める必要なく無詠唱で魔法が発動できる、ということになる。


「可能性はある?」


 首を傾げたユウに、レンはどうかな、と肩をすくめて苦笑した。


「可能性としてはあるかもしれないが……家系でたまたま、彼女が凄い力を持って生まれただけってこともある」

「でも彼女は何にかはよく分からないけど、狙われているんでしょう? それも何も関係ないとは、ちょっと考えにくくない?」


 小難しい顔をして呻り合っているユウとレンの話を、しばらくただ聞くだけに徹していたセリアが横から唐突に口を挟んだ。
 根っからの戦闘タイプで、魔法に関しては幼少時に教えてくれていた家庭教師の魔法使いでさえさじを投げられたセリアではあるが、だからと言って頭が悪いわけではない。魔法に関しての理解はできなかったとはいえ、ティアラが特殊であるということくらいは分かる。それを踏まえれば、彼女が狙われる理由もそこにあるのではないかという考えに至るのは自然な流れだろう。


「そりゃまぁ、そうかもしれんが。その辺も全部ひっくるめて、ティアラが目覚めなきゃわかんねぇよ」


 嘆息しながらレンは肩を落とし、この話はおしまい! と手を叩いて会話を強制終了させる。セリアは納得いかないように不満げにハスを尖らせてはいたが、確かに今ここでそれを議論したところでどうしようもない。当然納得できる結論が出て来るはずもないので、彼女もそこで諦めて野営の準備に取り掛かり始めた。
 ただでも、彼女が目覚めたところで疑問の解決にはならないだろうとユウは思う。彼女は自分が狙われている理由を知らないのだ。そして彼女自身、自分が詠唱無しで魔法を使える理由もわかっていないのではないだろうか。あるいは家系の血が濃く出ただけだと言う認識かもしれない。
 いかんせん、彼女の出生から彼女を言ってる人間にでも会えない限り、分からないかもしれない。ただそれは不可能に近い。彼女の国はとうに滅んでしまい、彼女に関わる人間の生存もほぼ絶望的に近い今の状況で、彼女に関する情報を持っていそうな人物は限られているのだ。


    あの、ローブの男ならもしかしたら。


 アリアハンで出会ったローブの男。冷たく、深い闇の底を覗く様な目をしたあの男はティアラを狙っているようだった。あの男ならきっと彼女のことを知っているのだろう。自分の知らない、彼女のことを。
 考えてぐっと眉間に皺を寄せる。どういう経緯であの男が彼女のことを知ることになったのか。なぜ彼女を狙うのか。それが気に入らないと言えば気に入らない。相手の感情が何であるにしろ、自分より多く彼女の事を知っているということが。
 でも正直に言えばまだしばらくは会いたくはなかった。今のユウではおそらく到底、あの男には敵わない。できればもう少し、せめて彼女を自分の手で守ってあげられるくらい強くなれるまでは。
 野営のたき火の木がはじけるのを見つめながら、ユウは自分の至らなさに憤りを感じて、膝を抱えたまま静かに唇を噛んだ。

 そうしてロマリアを発っておよそ一週間、ようやくユウたちは目的地であるカザーブの村の門をくぐった。村は思っていたよりも広く、豊かそうだった。のどか、という言葉がぴったりな自然溢れる美しい村だ。
 乗ってきた馬を村の入り口にあった旅人用の馬小屋に預け、情報収集の基本はまず酒場というレンの持論にしたがって、ユウたちは馬小屋の番人から教わった村にある唯一の酒場に向かった。
 そこは宿屋が提供している、食堂と一緒になっているような店だ。こじんまりとしてはいるが、昼間であるにもかかわらずちらほらといい気分になっている客が見受けられる。こんなご時世だから飲まないとやっていられないのか、それともこのあたりの気質なのか。苦笑いでほろ酔い気分の脚たちを眺めながら、一行は席を取ってとりあえず食事をしようと注文をしたついでに、注文を取りに来た給仕の女性にレンが声をかける。


「おねーさん、この辺でカンダタ見かけたことない?」


 にっこり愛想笑いを浮かべて声をかけたレンに、女性はあら、と僅かに頬を染めると、図々しくも並んで座っていたレンとセリアの間に割り込んで腰掛け、レンに擦り寄ってきた。
 セリアが不機嫌そうに顔をゆがめて女性をにらみつけたのをユウは見逃さなかったが、その形相があまりにも恐ろしかったので、自分が睨まれたわけでもないのに思わず肩をすくめて縮こまってしまった。
 そんな見るからに殺気立っているセリアをよそに、給仕の女性はレンにしな垂れかかってそうね、と甘ったるい声を上げている。


「一晩付き合ってくれたら、教えてあげてもいいわ」

「根城も教えてくれるんだったら、付き合ってあげてもいいよ」


 妖しげに笑って指先でレンの肩をなぞる女性に、レンが相変わらず笑みを浮かべたままそう答えると、女性はズルイ、と途端に顔を歪ませてハスを尖らせた。


「知るわけないでしょぉ~。カンダタさんなら、たまぁに飲みに来るくらいよ」


 拗ねた顔をした女性がそれより、と言葉を続けようとしたところで、カウンターから女将らしき年配の女性が顔を出して給仕の女性を一喝した。
 女性は不満げに顔をゆがめ、最後にレンに向かってにっこり笑うとまたね、とその頬に唇を押し付けてカウンターの奥へ消えていった。
 呆けたままのユウが女性の背中を視線だけで追いかけ、目の前のレンとセリアに戻すと、セリアが怖い顔のまま無言で手元にあったお絞りをレンに差し出していた。レンはきょとんとしていたが、セリアの行動の意味が分かったユウが、指先で自分の頬を指しながら苦い笑みをこぼした。


「ここんとこ、口紅ついてる」


 どうやらセリアはそれを拭け、という意味でお絞りを差し出したようだ。レンは肩をすくめて無言で差し出されたお絞りを受け取ると、さきほど女性の給仕が唇を押し付けていった頬をぬぐって、仏頂面のセリアにどうも、とそれを返した。


「その気にさせたんだから、責任持ちなさいよ」


 いらないわよ、と言わんばかりにレンが差し出したお絞りを受け取ってテーブルの端に放り投げ、セリアが低い声で呟く。
 レンは心外だ、とでもいうように瞳を見開き、なんの、とすぐに渋い顔をして見せた。


「俺は話聞いただけだろ」

「よっく言う……」

「なに? 最近ご無沙汰だからやきも……だっ!!?」


 呆れた顔でそっぽを向いたセリアの耳元にレンが唇を寄せて囁くと、それと同時に一瞬テーブルが盛大に揺れた。
 驚いてユウが後ずさり二人を交互に見れば、セリアは恐ろしい形相でレンを睨みつけ、レンはレンでテーブルに顔を伏せて肩を震わせている。


「バカなこと言ってんじゃないわよ」

「……だからっておまっ……おまえがそんなことしたらホントに潰れる……」

「あーいっそその方が悪さできなくていいんじゃなーい?」


 テーブルに突っ伏して肩を震わせながら、レンが息も絶え絶えに呻くように声を上げる。ほぼ瀕死といってもいいようなレンに向かって、セリアはなんでもないような顔のまましれっと返した。
 二人の会話でユウもテーブルの下で何があったのかは、なんとなく聞かなくても大体想像はついた。そして思わず想像して身を縮こまらせたのは、男として今のレンの気持ちが痛いほどよく分かるからだ。そしてそれを平気な顔をしてやってのけるセリアが、心底恐ろしい。さすがと言ってもいいかもしれない。


「どうでもいいけど困ったわね……いつ来るか分からないなんて」


 男の一大事をどうでもいいで片付けられたレンが何か言いたげに涙目の顔を上げたが、セリアに鋭く睨まれ何も言わずにテーブルに突っ伏したまま、そうだなぁと呟く。
 アリアハンにいた頃からこの二人が、なんとなく"そういう関係"なのはユウも知っていたが、いつもわりと冷静でセリアのブレーキ役だと思っていたレンが、今の二人のやり取りを見て、 案外セリアの尻に敷かれているような感じなのが可笑しくなって、ユウは思わず噴出してしまった。
 それをセリアに見とがめられ、ユウはさっと笑みを引っ込めてなんでもございませんと首を振り、腕組みをして思案するように椅子にもたれかかった。


「失礼ですが、ユウ=イペリオネさまですか?」


 さてどうしようか、と考え始めたところで突然、テーブルの傍に寄ってきた年若い男がユウの頭の上から声をかけてきた。名前を呼ばれ顔を上げると、若い男は突然申し訳ありません、と小さく会釈した。
 若い男は出で立ちからして村人ではないようで、しかし旅人というような風体でもない。服装は軽装だが、胸には金属製の胸当てをつけ、腰には短剣をぶら下げている。
 もたれかかっていた椅子から背中を離してユウが訝し気に男を見上げると、男はほんの少しだけ笑みを浮かべた。


「警戒なさらないで下さい。自分はある人にあなた方を案内するように頼まれて来た者です」

「……ある人?」


 ユウが怪訝な顔をすると、男ははい、と返事をして頷いた。


「カンダタ、と言えばお分かりいただけると思いますが」

「だからって、ハイソウデスカってついて行くと思ってるのか?」


 いつの間にか立ち直っていたレンが、男を上目遣いに鋭く睨む。男はレンを一瞥すると、迷いもなく腰にぶら下げていた短剣を鞘ごとさっと手に取り、ユウに差し出した。いきなり差し出された短剣にユウが戸惑っていると、どうぞ、と男が薄い笑みを浮かべた。


「あなた方に危害を加えたり、騙したりするつもりはありません。それに、あなた方は自分の申し出を断る理由はないはずですよ」


 男の言葉にレンが何ともいえない複雑そうな表情を浮かべた。セリアも疑わしい眼差しで男を見ているが、状況が状況なのでさすがに短気も起こさない。
 確かに今の自分たちに、カンダタの居所を突き止める術はないし、第一時間がない。男の申し出が本当なら、願ったりなのだが。
 しばらく黙ってそれぞれ思案していた三人が、互いに顔を見比べて同時に頷き、ユウが顔を上げて再び男を見上げた。


「わかった。あなたの言うことを信じる」


 ユウがそういうと男は安堵したのか、ようやく表情を崩してありがとうございます、と再び小さく会釈をした。


20160701 初稿


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