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天 球 儀

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蒼天の系譜 【序章】

これは 伝説の始まりの物語





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【序 幕】 そして始まる物語





    夢を見る。とても懐かしい夢だ。

 先の見えない長い廊下。その廊下に沿って並んだ、はめ殺しの格子窓。こぼれる光が反射して輝く床。響く幼い笑い声。駆けていく足音。
 見覚えのある景色をぼんやり眺めていると、やがて光の中を笑いながら、少年と少女が駆けてくるのが見えてきた。
 先を行く少年は幼い頃の自分だ。 その後ろを走る少女は、身なりからして高貴な身分であることが伺えた。足にまとわりついてくるドレスを邪魔そうにさばきながら、それでも懸命に少年の後を追っていく。
 懐かしい光景ではあったが、何も知らない無邪気で屈託のないその笑顔を、恨めしくも思う。幼い頃に体験した事実を反芻しているだけの夢だからこそ、なおさら。
 そんな光景を感慨深く眺めていて、ふと気が付く。不思議なことに、少女は笑っていると判断できるものの、その顔の細部はぼんやりと霞がかっているように見える。 おそらくそれは、自分の記憶が時間とともに曖昧になってしまっている所為なのだろう。最後に少女と会ってからそれだけ、もう顔すらまともに思い出せないほどの時間が経ってしまっているのだ。
 なのに未だ、その少女と過ごした時間を夢に見るのは。


「ユウ! 待って、ユウ!」


 少女が大きく息をついて立ち止まり、先をかけていく少年を呼び止める。


「もう疲れたの?」


 呼び止められて足を止めた少年ユウは、不服そうにハスをとがらせて少女を振り返った。少女は肩で息をしながら小さくうなずく。


「だって、こんなドレスじゃうまく走れないよ。それにこんなにたくさん走ったこと、ないもん」


 少女はそう言いながら、踝まであるドレスのすそを翻して見せた。


「じゃあ、いつもは何して遊んでるの?」


 くるりと回ってドレスを誇張してみせる少女に向かって、ユウがきょとんとして首をかしげる。 ユウからしてみれば、駆けまわるなどという動作は日常の一環であり、こんな廊下も大した長さではないのだ。
 ユウの問いに、少女はあごに指を当て、かわいらしく首をかしげてちょっと考えた後、ぽつりとこぼした。


「本を読んだり……景色を眺めたり……」

「城の外には?」


 およそ自分の生活とはかけ離れている少女の生活に、訝しげな顔をするユウ。
 そんな彼の表情を見て、少女は寂しそうに目を伏せて首を横に振り、窓の外に視線を向けた。 ユウが釣られるように窓へと目をやると、すぐ目の前を鳥が羽ばたいて横切った。 その眼下には広大な森が広がり、さらにその向こうには連なった山々が、霞がかってぼんやり浮かび上がっている。


「お城の外に……出たことがないの」


 その景色をじっと見つめたまま、少女が呟いた。
 少女の言葉に驚いたユウが目を見開き、窓の外から隣の少女に視線を移したが、少女は外を眺めたまま、小さなため息をついた。


「私はね、お城から出ちゃダメなんだって。外に出ると恐ろしいものが私をさらいに来るって」

「おそろしいもの? なにそれ?」

「わかんない……でも、ダメなんだって」


 首をかしげるユウに少女は頭を振り、ユウはいいな、とちょっとだけハスをとがらせる。


「一緒に走って遊べるお友達、たくさんいるんでしょ? 私の知らないこともをいっぱい知ってるし。……私が知ってるのはこの景色と本の中のお話だけ」


 遠く彼方を羨望するように見つめる少女の横顔を、ユウは暫くじっと見詰め、そっと窓の外に視線を移した。
 丁度トンビが上昇気流に乗って大空へと舞い上がっていく姿が見えた。そのまま風を捕まえ、森の向こうを目指して翼を広げて飛び去っていく。
 しばらく思案するようにその景色を眺めていたユウは、悲しそうな表情を浮かべたまま遠くを見つめる少女に向かってぽつりと呟いた。


「……いつか……」

「え?」


 ふと呟いたユウに、少女がきょとんとした顔をする。
 ユウは続きを言おうとして、でも言い出せずに口をつぐんで視線をさまよわせていたが、やがて意を決したようにきゅっと口元を引き締め、 こちらを不思議そうに見つめている少女に向き直った。


「いつか……俺が世界を見せてあげるから」


 ユウの澄んだ空のような、でも強い意志の篭ったその瞳が、まっすぐ少女を見る。
 その言葉に少女は驚いて目を見開き、暫く瞬きを繰り返した後、ホント? と瞳を輝かせながら首をかしげると、うん、とユウが力強く頷き、右手の小指を少女の目の前に差し出した。


「約束する」

「絶対よ?」


 少女の言葉にユウがもう一度頷く。
 それを見た少女は満面の笑みを浮かべて頷くと、おもむろに自身の首に手を回し、胸元にぶら下がっていたペンダントのチェーンを外して、それをそのままユウへ差し出した。
 銀色のチェーンのトップには、不思議な色の石が揺れている。一見無色透明に見えるが、光が当たると角度によって様々な色に変化する。 かと言って宝石の類ではない、見たこともない美しい石だ。
 差し出されたペンダントをきょとんとして見つめていると、少女が約束、と言って微笑んだ。
 暫くそのペンダントを見つめ小さく頷くと、ユウは自らの耳に飾られていたサファイアのピアスを一つ外して少女に差し出す。


「必ず、迎えに来るから」


 少女が差し出したペンダントを受け取って、ユウが笑った。 少女も、ユウが渡したピアスをそっと手のひらにおさめると、にっこりと笑って力強く頷いた。

 が、次の瞬間。

 笑みを浮かべていた少女と幼い自分の間に突然炎の壁が現れ、そのままその炎は少女を飲み込んで一瞬で消し去ってしまった。
 何が起こったのか理解できないまま、今まで見ていたはずの景色はかき消され、聳え立つ城が少女を消し去った炎に包まれて朽ちていく光景に変わり、 そこで初めて第三者として眺めているだけだった視点が、幼いユウのものと一緒になった。
 燃え盛る炎の中から聞こえるのは少女の悲鳴か、それとも城内に残された人々の断末魔か。
 そこに取り残された幼いユウは、ただ呆然と焼け落ちていく城を眺めていることしか出来なかった。



20160221 初稿
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